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ナラティブアプローチ

執筆者の写真: 院長院長

 先日、附属病院緩和ケア病棟の事例検討会に出席してきた。

主治医の先生、担当看護師チームとのグループワーク。傍観とはいかず、学生側にも意見を求められ、患者さんらそれぞれの背景をベースに多角的に考察する。普段、孤軍奮闘で診療にあたっているので、ケーススタディに出て学ぶことは大変重要。求められる環境で適宜自分の意見を簡潔にまとめ発言し合う。席のとなりに看護師長さんが居座り(居座ってくださり...汗)、あなたがたどう思うのぉ~?って微笑を利かせながら濃厚な問いを続けてきたのには、少々動揺した。

最後に、副病院長からのインプレッションでは、何をもって患者さんに接しているかもう一度考えてみよう。その中で一つ「病室で一日を過ごしてもらう中で、どんな時に楽しいって感じてもらえるかな。どうしたら楽しいっていう感情を引き出せるのかな。楽しいを何回感じてもらえるかなぁ。」という、楽しいを引き合いに出して、今後の課題を混ぜ込み会をおえた。緩和ケア領域で楽しい本質を考える。慎重にならざる負えないけれども、楽しいを与えるチャンスはどこかにある。難しいコミュニケーションの場面でも、真摯さが問われ、応答する。逃げずに関わることで、活路が見い出される。決して感覚でできることではない。

「楽しい院にしよう」と掲げてきた身として、なんだか安心し、救われたような一言だった。しかし、楽しいといった綺麗な言葉で片付けられない局面は往々にしてある。

「寄り添う、傾聴します」といったある種有り触れた言葉で茶を濁さず、もっと高いところでいざなえる様、いまは領域を限定することなくがんばっていかなくてはならない。

では高いところとは?端的にいうと、心身を治せる人になることなのだが、その過程で自分の治療戦略に陶酔し、患者さんを置いてきぼりにしてしまうことは、甲斐なし。

コミュニケーションスキルを問い、探求し、深く入り込んでいく。そして疑う。

心身治療のスキルとして、ナラティブアプローチを用いる。患者さんの話を物語として聴く対人接近法。聞き手として患者さんの病態・疾患にだけ傾聴するのでなく、その背景にあるストーリーを聞き出す。また患者さんがこの院にきてくれた理由や治したいと思った理由も含め、罹患した経緯やその状況を問診時に聞き出し、また医療者自らが語り手となってその物語に介入していく。そこで、見えてくる内在的思考(原因は自分にある、そうなってしまったのは自分のせい)を外在化するように一緒に導く。本人=問題。一旦、引き離す。

そこから見えてくるものを提示しながら、ストーリーを補強していく。

それを踏まえた上で治療戦略を考えていくことが最善なのではないだろうか。

誰しも当てはまることではないのだが、緩和ケア病棟のケーススタディから学んだ一例を挙げてみた。






すべてを今すぐに知ろうとは無理なこと。

雪が解ければ見えてくる。

ゲーテ

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